幸花

幸花

このアプリを使うことも、小説を書くことも、全て初心者ではじめてのことですが、書きたいと思った話を書いていこうと思います。

文字数関係で省略しました。〜「女スパイが雇った守り屋は、無口で少し変わった男だった」から〜

教科書を盾にして、ビデオカメラをセットしていると、コナじゃなかった、ラゼッタから「何してるの?」と聞かれた。
私は映り具合を調整する。
もう少しアップにしたほうがよいかな。
「何してるの、って。この後、カーティ先生の講義だから、録画するのに決まってるじゃない」
ラゼッタにそう言うと、彼女は呆れたように息を吐いた。
大学に潜入して一日目。私はひょんなことからヴィル様の護衛、兼、スパイのお手伝いをすることになった。
でもあのとき、クイーンさんが言ってくれなかったら、こうしてヴィル先生が講義する姿を拝むことも、受けられることもなかった。
この奇跡をビデオカメラに、しっかりと収める所存だ。
意気込み万端で準備していると、ネクタイを締めたヴィル様が教室に入ってきた。
何をやっても似合ってしまうヴィル様が尊い!
どうしてもニヤけてしまう顔を両手で隠していると、隣に座るラゼッタが手を上げて、
「先生~。アリータが体調わ」
私は、体調不良に仕立てようとしてきた彼女の口を塞ぐ。
「カーティ先生!何もありませんわ!」
ヴィル様は首を傾げた。
そんな仕草もベストショットだ。
「ちょっと!ラゼッタ。意地悪しないでよ」
「机の上にある、その隠し撮りを暴露しても良かったのよ」
だが、暴露されなくてもヴィル様はビデオカメラに気づいたらしく、さり気なくカメラの死角に逃げてしまう。
きっと、恥ずかしがり屋さんなのだろう。
もしこの後、私だけ教室に残るように言われて、ヴィル先生と二人きりになったりしたら、どうしよう。そして私たちは、誰もいない教室で……ぐふっ。
妄想に華を咲かせる私に、ラゼッタから「本当に保健室行ったほうがいいんじゃない?」と本気で心配された。
保健室も私にとっては、パワーワードであった。
次々と溢れる妄想にふけている間に、講義は終わり、私は教室に残されることなく、ラゼッタと薬学研究室に向かった。
「幸せで楽しい時間って、どうして早く過ぎちゃうのかしら?ねぇ、ラゼッタ?」
と廊下を歩きながらラゼッタに聞くと、
「何言ってるの?楽しい時間はこれからじゃない」
と言われた。
せっかく大学生になれたというのに、彼女は今も仕事をする為にここにいるといった感じで、少しつまらない。私は、ラゼッタと青春みたいなこともしてみたいと思っている。
(「守り屋に転職した彼女 後編」)
の冒頭予定だった話 終
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登録日 2022.02.19 11:03

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