『ドリーム・ウォーカー』3.武士と僧侶(2)アップ。
「何を言う…」
かっとして相手の顔を睨みつけたとたん、冴え冴えと深い瞳に捕らわれる。
「そなたは力でもってよしのを攫った。では、それを貫くしかあるまい。貫くなら、同じく力をもって、よしのを守るがよい」
「守った! 守ってきたのだ!」
俺はあまりな言い草に激怒した。よしのを守り、看病しながら逃げ回った日々、手下共から次々と見捨てられ孤独になっていく日々が一度に頭を過ぎ去った。
「俺は守った! 全てを犠牲にして守ってきたのだ!」
自分の喜びも楽しみも全て捨てて、よしのを背負い連れ歩いた。花が咲けば美しいと言うか、水の側なら気持ちがよいとつぶやくかと、うろうろと歩き回ったこともある。
だが、よしのは、一緒になってから、ついにただの一度も笑ってくれなかったのだ。
いつも静かに目を閉じて、『あなた、もう、よろしいのです』というばかり、側で手を握る俺の目の中一つ覗き込んではくれなかった。たとえ肌を重ねていても。
目頭が熱くなり、頬をだらだらと涙が流れた。
「犠牲になぞ、なってはおらぬよ」
かっとして相手の顔を睨みつけたとたん、冴え冴えと深い瞳に捕らわれる。
「そなたは力でもってよしのを攫った。では、それを貫くしかあるまい。貫くなら、同じく力をもって、よしのを守るがよい」
「守った! 守ってきたのだ!」
俺はあまりな言い草に激怒した。よしのを守り、看病しながら逃げ回った日々、手下共から次々と見捨てられ孤独になっていく日々が一度に頭を過ぎ去った。
「俺は守った! 全てを犠牲にして守ってきたのだ!」
自分の喜びも楽しみも全て捨てて、よしのを背負い連れ歩いた。花が咲けば美しいと言うか、水の側なら気持ちがよいとつぶやくかと、うろうろと歩き回ったこともある。
だが、よしのは、一緒になってから、ついにただの一度も笑ってくれなかったのだ。
いつも静かに目を閉じて、『あなた、もう、よろしいのです』というばかり、側で手を握る俺の目の中一つ覗き込んではくれなかった。たとえ肌を重ねていても。
目頭が熱くなり、頬をだらだらと涙が流れた。
「犠牲になぞ、なってはおらぬよ」
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登録日 2017.06.01 12:10
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