segakiyui

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『ラズーン』『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』連載中。メルマガ『ショートストーリーシリーズ』『指令T.A.K.I』『ドラゴン・イン・ナ・シティ』展開。

『ハートレイト』2アップ。

「何だったんです?」
 詰め所に戻ると、後輩の大原が看護記録から顔を上げた。
 もう昼休みで、勤務者は交替で食事を取っているのだろう。詰め所内は静かだった。
「深夜明けで、お小言ですか?」
 やんわりと尋ねる大原に、北野は固まった心を解きほぐされていくような気がした。
「ううん……そうじゃなくて……」
 隣に腰を下ろし、話すともなく話し始めていたのは、大原の年齢によるものかも知れない。
 大原さつきは、看護師になったのこそ北野より後だが、北野より三歳ほど上になる。それまで法律系の大学に通っていたのだが、『何か手応えが欲しくなって』中退、改めて看護学校を受験した。通っていた大学はかなりレベルの高いところだったとかで、『泣いて止める父母を振り切り』看護師になった、と苦笑まじりに話したことがあった。
 北野はそれこそ何となく、に近い看護師志願。食べていくのに不自由がない、程度の発想で看護師になった。大原の決断力にはあきれるしかないというのが正直なところだ。
「岩見さんがねえ……でも、それは少し、へまをしましたね」
 あっさりと大原が言っても、北野は腹が立たなかった。
「うん、そうだよねえ……へまをした。もっと考えればよかったかもしれない。師長さんとか主任さんと部屋を片付ければ……」
「階級に弱いですからね、あの人は」
 くすりと大原は醒めた笑い方をした。
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登録日 2017.05.01 08:54

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