segakiyui

segakiyui

『ラズーン』『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』連載中。メルマガ『ショートストーリーシリーズ』『指令T.A.K.I』『ドラゴン・イン・ナ・シティ』展開。

『桜の護王』11.葛城(4)アップ。

 風呂場で明るい光の中で見た護王は、思っていたよりもずっときれいで官能的だった。
 熱で肌が桜色に上気している。滑らかな表面に湯が滑り光を零す。一瞬触れた部分がまとわりつくような感触で、湯気より先に護王の裸身にあてられ、視界が揺らめくような気持ちさえ覚えた。
 細身の、けれどしっかりとした骨格が照れくさそうに背中を向ける。護王の頬が赤いのは恥じらっているよりは湯の熱さのせいだろう、けれど自分の顔もそれ以上に赤いかもしれない。
 タオルに石鹸を泡立てて、そっと背中を擦り出す。柔らかなシャボンの香りにときどきつんときつい樹の香りが混じる。
 うつむきがちに黙って洋子に背中を擦られていた護王が掠れた声で何かをつぶやいて、「はい?」と思わず覗き込むと慌てたように体を竦めた。それでも、『それ』の気配は何となく通じるものがあった。
 慌てて身を引こうとしたら、そっと手首を掴まれた。引き寄せられて耳もとで「今夜」。ぽつんとつぶやかれた声がひどく甘く頼りなく聞こえた。「はい」。うなずくと同時にお互いにくすぐったく笑ったのに。
コメント 0
登録日 2016.09.21 12:25

コメントを投稿する

1,000文字以内
この記事に関するコメントは承認制です

ログインするとコメントの投稿ができます。
ログイン  新規ユーザ登録

0

処理中です...

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。