政治家の資質への報い

米国では1月6日に、上下両院議会を開く習わしがあります。

大統領選の選挙人達が投じた票はその議会で初めて開封されますが、連邦議会議員には、その結果に異議を申し立てる権限が与えられています。不正選挙を連邦最高裁判所が認めた等々の正当な理由がある場合、問題となる州の選挙人が投じた票を無効にするよう、申し出ることが可能なのです。上下両院の議員が少なくとも一名ずつそれを訴え、かつ上下両院の過半数の賛成が得られたら、

 shadow electoral votes

と呼ばれる代替選挙人達の票が、正当な票として扱われます。これは1960年の大統領選において実際に行われた、史実です。そして私はこの shadow electoral votes の shadow という言葉に、政治家の資質への報いを強く感じます。なぜなら shadow には陰という意味の他に「前兆や前触れ」と言う、政治家にとって極めて重要な資質である「先見性」に通じる意味が、あるからです。

国家の舵取りをする政治家には、優れた先見性がなければなりません。米国の連邦議会議員ともなれば、世界で最もその資質を求められる人達なのでしょう。その人達が先見性を発揮し、州政府の任命した選挙人の票が無効になることを予期し、その代わりとなる代替選挙人の票を上下両院議会に提出していたなら、先見性と実行力への報いとして、代替選挙人の票を正当な票として扱う。これが米国という国家の連邦議会なのだと、私は考えています。

米国では副大統領が、上院議会の議長を兼任します。そして上院議員は自らを、古代ローマで用いられていた語彙に等しい、元老院議員と呼ぶ風習があります。共和制時代のローマは、平時には二名の最高権力者を選出し、有事には一名の最高権力者を選出していました。次期大統領が決まらないというのは「有事」ですから、上院議会議長を兼ねる副大統領が一時的な最高権力者となり、次期大統領を決める議会を宰領する。

こんな気が、私はするんですね。
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登録日 2020.12.18 07:05

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