『桜の護王』11.葛城(1)アップ。
(…何か……薬を使われた…?)
ぞくりとした寒気が広がった。
洋子を殺すのではなく攫ってきたあたり、そしてまた、身動きできない状態で意識を戻せるように設定するあたり、相手の意図に不快なものがある。
(知覚は残して動きだけを封じる)
それは手に入った獲物を弄ぶか、後でゆっくり料理するまで新鮮な状態で置いておきたいという肉食獣の遣り口ではなかったか。
「気ぃついた?」
ふいに背中から聞き覚えのある声が尋ねてきて、洋子はぎょっとした。
「体、動かへんやろ? でも、聞こえてる、そうやろ?」
甘くてかわいらしい声、けれど、この岩屋にはあまりにも不似合いで予想外の声。
(まさか)
思わず見開いた目で声の方を探ろうとしたが、頭を動かそうとしたところで痛みが強くなって動けなくなる。また幾筋か伝ってきた血がぬるぬると頬を辿り、口元にも届いた。
「里にある薬草やしな。けど、安心してええで、使い慣れてるさかい、間違いはせえへん」
「あや……か…?」
「へえ、しゃべれるんや…」
くすりと笑みを含む声がして、するすると絹ずれの音がした。視界を回りこんでくる白い巫女衣装、ゆっくりと膝を折って覗き込んでくる顔はまさに綾香だ。
「…ど…して…」
何とか声を絞り出した洋子に綾香は表情を凍らせた。
「どうして? 御挨拶やな、人のもんに手ェ出しといて、気にもしてへんの?」
ぞくりとした寒気が広がった。
洋子を殺すのではなく攫ってきたあたり、そしてまた、身動きできない状態で意識を戻せるように設定するあたり、相手の意図に不快なものがある。
(知覚は残して動きだけを封じる)
それは手に入った獲物を弄ぶか、後でゆっくり料理するまで新鮮な状態で置いておきたいという肉食獣の遣り口ではなかったか。
「気ぃついた?」
ふいに背中から聞き覚えのある声が尋ねてきて、洋子はぎょっとした。
「体、動かへんやろ? でも、聞こえてる、そうやろ?」
甘くてかわいらしい声、けれど、この岩屋にはあまりにも不似合いで予想外の声。
(まさか)
思わず見開いた目で声の方を探ろうとしたが、頭を動かそうとしたところで痛みが強くなって動けなくなる。また幾筋か伝ってきた血がぬるぬると頬を辿り、口元にも届いた。
「里にある薬草やしな。けど、安心してええで、使い慣れてるさかい、間違いはせえへん」
「あや……か…?」
「へえ、しゃべれるんや…」
くすりと笑みを含む声がして、するすると絹ずれの音がした。視界を回りこんでくる白い巫女衣装、ゆっくりと膝を折って覗き込んでくる顔はまさに綾香だ。
「…ど…して…」
何とか声を絞り出した洋子に綾香は表情を凍らせた。
「どうして? 御挨拶やな、人のもんに手ェ出しといて、気にもしてへんの?」
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登録日 2016.09.18 12:17
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