『ラズーン』第一部 12.盲目の導師(6)(個人サイトでアップ)
「この森を抜けるとネークに入るぞ」
「ふぅん……っつ」
アシャの声に手綱を引いたユーノが微かに眉をしかめる。
「痛むのか?」
「たいしたことないよ、あれだけ斬られたわりにはずいぶんまし」
笑い返したユーノが、それでも背中をなるべく捻らないようにしているのに、アシャは無理するな、と言いかけてことばを呑む。
「今日中に入れるかな」
「ああ、大丈夫だろう」
「そう」
ほっとした顔でユーノは馬をすすめる。
(無理をさせているのは俺だ)
アシャの胸中は苦い。
イルファに女ではないかと疑われてから、ユーノはことさら元気に振る舞おうとしている。よく笑い、よく食べ、夜もそうそうに眠りにつく。
確かにひたすら傷を回復させようとしていると見えるが、時々追い詰められたような顔をして背中を向けるときがあって、その姿は誰も助けてはくれないのだ、と呟いているようにも見える。
(無理もない)
アシャは溜め息をついた。
(あんなことをするような付き人など、安心できやしない)
「ふぅん……っつ」
アシャの声に手綱を引いたユーノが微かに眉をしかめる。
「痛むのか?」
「たいしたことないよ、あれだけ斬られたわりにはずいぶんまし」
笑い返したユーノが、それでも背中をなるべく捻らないようにしているのに、アシャは無理するな、と言いかけてことばを呑む。
「今日中に入れるかな」
「ああ、大丈夫だろう」
「そう」
ほっとした顔でユーノは馬をすすめる。
(無理をさせているのは俺だ)
アシャの胸中は苦い。
イルファに女ではないかと疑われてから、ユーノはことさら元気に振る舞おうとしている。よく笑い、よく食べ、夜もそうそうに眠りにつく。
確かにひたすら傷を回復させようとしていると見えるが、時々追い詰められたような顔をして背中を向けるときがあって、その姿は誰も助けてはくれないのだ、と呟いているようにも見える。
(無理もない)
アシャは溜め息をついた。
(あんなことをするような付き人など、安心できやしない)
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登録日 2017.03.13 18:37
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