『朱の狩人』8.桜、吹雪く (2)アップ
夜になっても街中はいっこうに冷えてこなかった。
内田は真奈美のマンションを出て、うたた寝の夢で見たバーガーショップ近くの歩道橋へバイクを走らせていたが、周囲をやたらと走り回るパトカーには気づいていた。
(まさか……仁)
不安が強まる。
あの歩道橋で、虚ろな顔で道路を見下ろしていた仁の姿が頭から離れない。自分にマイヤほどの感応力があれば、今仁がいる場所も突き詰められるのだろうに。焦りが広がるのを奥歯を噛みしめて殺している。
検問にひっかからないために裏道をすり抜けていこうとしたとき、前方から聞き覚えのあるバイク音が近づいてくるのに気づいた。目を射るような派手な紅のタンクのCB750だ。
(あれは……)
険しく眉をしかめて速度を落とす。向こうもそれとすぐに気づいたらしい。ゆっくりとスピードを落として、やがて人通りの少ない裏道で双方バイクの鼻先を突き合わせるように止まった。
「……縁があるな」
苦笑しながら相手が話しかけてき、ヘルメットを脱ぐ。殺気はないが、するりと通してくれる気配でもなさそうだ。気力はあるが、時間が惜しい。手荒くともすぐさまケリをつけるか、一気に側を抜き去るかと思考を巡らせた内田の頭の中を読んだように、榊は穏やかに笑った。
内田は真奈美のマンションを出て、うたた寝の夢で見たバーガーショップ近くの歩道橋へバイクを走らせていたが、周囲をやたらと走り回るパトカーには気づいていた。
(まさか……仁)
不安が強まる。
あの歩道橋で、虚ろな顔で道路を見下ろしていた仁の姿が頭から離れない。自分にマイヤほどの感応力があれば、今仁がいる場所も突き詰められるのだろうに。焦りが広がるのを奥歯を噛みしめて殺している。
検問にひっかからないために裏道をすり抜けていこうとしたとき、前方から聞き覚えのあるバイク音が近づいてくるのに気づいた。目を射るような派手な紅のタンクのCB750だ。
(あれは……)
険しく眉をしかめて速度を落とす。向こうもそれとすぐに気づいたらしい。ゆっくりとスピードを落として、やがて人通りの少ない裏道で双方バイクの鼻先を突き合わせるように止まった。
「……縁があるな」
苦笑しながら相手が話しかけてき、ヘルメットを脱ぐ。殺気はないが、するりと通してくれる気配でもなさそうだ。気力はあるが、時間が惜しい。手荒くともすぐさまケリをつけるか、一気に側を抜き去るかと思考を巡らせた内田の頭の中を読んだように、榊は穏やかに笑った。
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登録日 2017.02.15 18:24
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