『朱の狩人』8.桜、吹雪く (1)アップ
「ふっ!」
飛び出した空間の目測はわずかに狂っていた。イメージした場所より数十cm上に出現してしまい、仁はバランスを崩しかけてかろうじてアスファルトに足を踏ん張り体を支えた。
(つう!)
前屈みに支えた腹のあたりに鋭い痛みが走って、思わず体を抱きかかえて蹲る。吐き戻したばかりの胃から熱い塊が込み上げ、必死にたえる努力も虚しく喉から口に広がった。苦くて生臭い鉄の味、引き締めた口元を内側からこじ開けるように溢れてとろとろと顎を伝う。
続く吐き気をこらえ、仁は道路の端に身を寄せ、手の甲で口の端を拭った。呼吸が乱れてすぐに動けない。しばらくそうして壁によりかかっていると、眩んでいた視界が少しずつ明暗を取り戻し始めた。街はずれの薄暗い街灯の下、道路に点々と血が落ちている。
(やっぱり……)
能力は制御できているが、確実に体が負担に耐えかねて傷ついている。
(時間が…ないな)
仁は荒い呼吸を繰り返しながら、そっと顔を上げた。
飛び出した空間の目測はわずかに狂っていた。イメージした場所より数十cm上に出現してしまい、仁はバランスを崩しかけてかろうじてアスファルトに足を踏ん張り体を支えた。
(つう!)
前屈みに支えた腹のあたりに鋭い痛みが走って、思わず体を抱きかかえて蹲る。吐き戻したばかりの胃から熱い塊が込み上げ、必死にたえる努力も虚しく喉から口に広がった。苦くて生臭い鉄の味、引き締めた口元を内側からこじ開けるように溢れてとろとろと顎を伝う。
続く吐き気をこらえ、仁は道路の端に身を寄せ、手の甲で口の端を拭った。呼吸が乱れてすぐに動けない。しばらくそうして壁によりかかっていると、眩んでいた視界が少しずつ明暗を取り戻し始めた。街はずれの薄暗い街灯の下、道路に点々と血が落ちている。
(やっぱり……)
能力は制御できているが、確実に体が負担に耐えかねて傷ついている。
(時間が…ないな)
仁は荒い呼吸を繰り返しながら、そっと顔を上げた。
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登録日 2017.02.14 23:43
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