こうした高大連携には、学生集めで優位に立つ名門大学も積極的な姿勢をみせている。21年、明治大学と日本学園は系列校化に関する基本合意書を締結し、26年4月から日本学園中学校・高等学校は明治大学付属世田谷中学校・高等学校となり、29年度から明治大学への付属高等学校推薦入学試験による入学が始まる。昨年には上智大学が横浜雙葉(横浜市)、清泉女学院(神奈川)、福岡雙葉学園(福岡市)など40以上の学校と連携協定を結んだことは大学業界で注目された。
医科大学でも、以前から付属校を持つ大学は毎年、一定数の内部進学者を迎え入れているが、付属校・系属校というかたち以外としては、北里大学や獨協医科大学のように特定の高校に指定校推薦枠を設けているケースもある。ちなみに医学部を設置していない早稲田大学の系属・付属校は、日本医科大学に内部進学枠を持っていることは知られている。
高大連携が広がる背景には何があるのか。前出・石渡氏はいう。
「少子化の影響で大学に入りやすくなっていることから、専門学校や短期大学の入学者が減る一方で、大学進学率は上昇しており、短期的には大学経営はそこまで悪くはならないものの、長期的にみれば経営環境が厳しくなっていくのは明らかです。大学間での学生獲得競争の激化が予想されるなかで、各大学が学校推薦型選抜や総合型選抜など、一般入試以外のかたちで、できるだけ年内入試によって入学者を確定できるよう、高大連携に取り組んでいるのです。
一方、中高一貫校を含む高校側としては、上位クラスの大学に推薦枠や内部進学枠を持っているというのは、入学者獲得の面で強いアピールポイントになります。よって、大学と高校双方にとってメリットのある高大連携は今後の加速していくと予想されます」
そうした高大連携だが、大学の間では温度差もあるという。
「本来であればそうした取り組みに積極になるべき経営の厳しい大学ほど、動きが鈍いです。経営が悪化した大学ほど危機意識が薄いといってしまえば、それまでですが、高校側としても下位クラスの大学と提携しても学生集めの面でメリットにはなりにくく、知名度や就職実績などの面で劣る大学は提携先を見つけにくいという面もあるでしょう。結果、中堅クラス以上の大学と高校との間で提携の話が進みやすくなります」(石渡氏)
すでに定員割れなどで大学が閉学する事例も出ているが、長期的にみると大学経営を取り巻く環境は深刻度を増す。22年度の全国の大学入学定員は約63万人であるのに対し、文部科学省の試算によれば2040~50年度の大学入学者数は約50万人となっており、総定員数の約8割の水準にまで落ち込む。大学の淘汰がますます加速するなか、入学者確保に向けた大学の取り組みは過熱する一方だ。
(文=Business Journal編集部、協力=石渡嶺司/大学ジャーナリスト)