
大手回転ずしチェーンの「スシロー」が好調だ。
2024年10~12月期の連結決算では純利益が前年同期比88%増の61億円。2025年9月期通期の純利益予想の4割を稼ぐほどだという。一般的に外食産業は年末年始が稼ぎ時なので、この影響ももちろんあっただろうが、それを踏まえても盛況だ。
背景には、映像ディスプレイを使用したすしの注文システム「デジロー」設置店の好調がある。
実は、デジロー設置の背景には、回転ずし業界をめぐる変化が見えてくる。スシロー以外の各社についても見つつ、デジローから見える業界の現状と今後を解説する。
デジロー(正式名将:デジタル スシロービジョン)は、各客席に付けられた大きなモニターに、すしの回る様子が映されるシステムだ。
客はまるで本物のすしが回転しているような気分の中、モニター上のすしをタップして注文をする。いわば、デジタル化された回転ずしである。
このシステムは2023年9月から東京や大阪をはじめとした店舗で試験的に導入されていた。導入店舗の売り上げや顧客満足度が高かったため、2025年度に全国100店舗への拡大を予定している。
このシステムが売り上げに貢献したことは、今回の利益増加にもよく表れている。
デジローが優れているのは以下の3つの点だ。
1 ワクワク感の演出による客単価の増加
2 キッチンの作業効率化
3 衛生面での利点
1つ目は、客単価が増加すること。筆者の推測だが、客単価が増加する背景にはデジローが持つ「ワクワク感」があると思う。
これまでのパッドでの注文だと、客は欲しいものだけを注文するから、興味のない商品を見る機会はなかった。ただ、デジローでは画面に流れてくるすしネタはランダムで、興味の無い商品でも楽しくなってゲーム感覚でタップしてしまう。ついつい、という感じだ。これが、客単価のアップにつながっていると考えられる。
事実、ファミリー層や若年層でデジローの効果が上がっているのは、こうした「ワクワク感」に親和性が高い客層だからということもあるだろう。
2つ目は、キッチンの作業効率の高まりだ。実際にすしを流す人的コストを減らすことができ、店舗運営の効率が上がる。
実はスシローでは、デジローに加えて「オートウェイター」というシステムも導入しているが、これはタッチパネルで頼んだ商品を、自動でテーブルまで運ぶ仕組みだ。デジローとの合わせ技で、店舗運営の効率アップに大きな貢献を果たしている。
さらに3つ目として、衛生面での心配が無いことも重要だ。
スシローは「醤油ペロペロ事件」で安全性への不安が生まれたことも記憶に新しい。これはすしがレーンに流れていたからこそ起こる問題だったが、デジローではその心配をする必要はまったくない。「スシローは不衛生じゃないの?」というイメージを覆す点で非常に優れている。
こうして考えると、デジローは客側にとっても店側にとっても良いことずくめで、非常に優れたシステムだといえるのだ。