徹底的に作品と向き合い続ける?橋氏の映像業界歴は長く、岩井俊二監督の映画制作会社・ロックウェルアイズで劇場用映画、CMやミュージックビデオ、ドラマなどの映像作品のプロデュースを8年ほど手がけた後に、日活に移籍した。
日活では、それまでと同様の映像作品を手がけながらも、バラエティや音楽ドキュメンタリーなど仕事の幅を広げた。
「その頃ですね。Netflixのオリジナルコンテンツの規模感やエンターテインメント性に衝撃を受けたのは」
日本映像製作の常識の範疇にとどまらない企画性、日本だけでなく海外の観客にも作品が直接届くグローバルプラットフォームであるNetflixを次のステージとして一歩を踏み出した。
髙橋氏がNetflixで手がけてきたのは、脚本開発などの企画立案から、製作プロデュースに至るまでの、映像コンテンツ製作全般だ。
2020年の入社からすでに『浅草キッド』『ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~』『地面師たち(2024年世界独占配信予定)』『極悪女王(2024年世界独占配信予定)』などの映画やドラマから、『LIGHTHOUSE』『トークサバイバー!』といったバラエティ、日米韓チーム共同プロデュースの『ONE PIECE』など話題作を多くプロデュースしている。
髙橋氏に、Netflixとそれまでの日本の映像会社との仕事の違いを聞いてみると、「視聴者から楽しんでいただけるのであれば、前例のない、見たことも聞いたこともないような企画でも、背中を押してくれる環境が大きい」と語る。
「企画の検討でポイントになるのは、物語のどこに新規性があり、視聴者はどこに驚いてくれるのか、どこに喜んでもらえるのか。作品のコンセプトやテーマに共鳴してもらえるか。この物語はおもしろいのかといった部分に注力しています。原作が何万部売れているか、既存のファンがどのくらいいるのかなどは、企画の検討の過程で話題にあがったことがありません。たしかにファンベースは大事なのですが、最優先事項には決してなりません」
そうなると、企画の最重要ポイントはどこになるのだろうか。
「新しい主人公像であったり、その主人公が成し遂げていく物語に、いままでにないストーリー性があるかどうか。それを映像化してみたいと思うか。誰も見たことがないものを追求していくことが、いちばん重要かもしれないです」
冒頭でも述べたように、ここ最近のNetflixには、俳優たちと共同で作品を製作する流れがある。
俳優のなかには、演じるだけではなく、演出やプロデュースに興味を持ち、Netflixシリーズ『グラスハート』では共同エグゼクティブ・プロデューサーとして参加している佐藤健や『イクサガミ』でアクションプランナー兼プロデューサーとしても参加をする岡田准一のようにクリエイティブ面を含めた製作全般に関わって、作品をよりよくしていこうという意識が強い演者も少なくない。
ハリウッドなど欧米では、俳優が製作会社を立ち上げ、自ら企画・製作や出演するケースが以前からあるが、日本でもそれが一般的になっていくのだろうか。
それに対して?橋氏は「たまたまNetflixでそういった作品が続いているというのはありますが、いま改めてそのトレンドを感じることはありません」と語る。
「主演&プロデュース企画」として俳優の名前が前面に打ち出される作品は、その俳優たちのファンベースがヒットのカギとなるのであれば、多くのファンを抱える原作を映像化したエンターテインメント大作と、企画の立て付けは変わらないようにもみえる。