その経験も糧に、今では動画編集のスキルを買われて他のアイドルグループのライブで使用する映像や、「TikTokでバズりたい」と願う友人の映像制作を引き受けることもあるという。
相手のために手がけた作品が「バズっていたり、ライブの映像が『よかった』とコメントをいただけるとうれしい」と噛み締めつつ、Lovelys時代を経て「みずから考える力、動画の編集力がついた」とほほ笑む。
2020年5月、八木沙季は焦っていた。
当時は、コロナ禍初の緊急事態宣言下で、日本全国が自粛を強いられていた時期。
むろん、アイドル界にも余波が押し寄せ、彼女もLovelysの一員として「ライブもできず、ファンのみなさんにも会えない状況」で「何かしないと」ともがいていた。
その一環として取り組んでいたのが、YouTube動画だった。しかし、張り切って「7~8分の長尺動画」を編集しても、再生数は「100~200ほど」とふるわず「けっこうキツいなぁ」と実感。
その後、打開策として、ふと「短い(尺の)動画を毎日アップできれば、ファンのみなさんも離れないかな」とひらめいたことが、くしくも「TikToker・八木沙季」の原点となった。
当初は「YouTubeっぽい動画をTikTokでも」と、気軽に考えてのアイデアだった。
1分の短尺であれば、長尺と比較して編集時間も短い。加えて、当時は「ダンス動画が流行っていた」ために差別化として、初めてアップしたのが「目を開けたままクシャミをすると目玉が飛び出るらしい」の「検証」動画だった。
@yagi_shaki 目を開けたままクシャミをすると目玉が飛び出るか検証 みんなもやってみて #くしゃみ #検証 #おすすめ #おすすめにのりたい ? オリジナル楽曲 - 八木沙季
フォーマットは今も変わらない。彼女の動画はユーザーへ疑問を提示して敬礼ポーズで「検証します!」と宣言するところからスタートし、コミカルに検証風景を見せるという簡潔な流れだ。
同様の動画をYouTubeでアップしても満足する再生数に満たなかったものの、TikTokでアップした途端に反響を集め「60万回以上」の再生数を獲得。
「コレや!」と直感したテーマがヒット、やがて彼女をフォロワー数70万人超のインフルエンサーへと押し上げた。
八木沙季の「検証します!」動画は、今や彼女の代名詞だ。
コロナ禍でひらめいたアイデアが原点となったが、バズったのはけっして偶然ではない。そう思えるのは、彼女自身によるショート動画のセオリーを聞いたからだ。
TikTokの動画は「最初で心をつかめるかどうか」による。日本で流行しはじめた当初は“開始3秒”の定説もささやかれたが、今は「開始0.1秒」と彼女は実感する。
そして、動画の構成にもこだわりがある。よく表れているのは、代名詞の「検証します!」動画と共に精力的にアップするダンス動画だ。
撮影時はやや引いた位置にカメラを設置、動画内では自身が踊る頭上に空間が生まれる画角を保つ。
空間に挿入するのは「過去にあった面白エピソード、失敗エピソード」のテキストだ。人が「瞬時に読めるスピードの文字数」も意識して、曲の終盤でエピソードの「オチ」を見せる。
@yagi_shaki 嘘ついてごめんなさい あ、荒野行動大好き民です #えなこダンス #荒野行動 #henceforth #踊ってみた とともに #テキストネタ #おすすめ #おすすめにのりたい ??? オリジナル楽曲 - アート - __ke