アメリカ・アルファベット傘下のグーグルが1月24日、独占禁止法(反トラスト法)違反で司法省及び8つの州から提訴された。この提訴で司法省は同社からネット広告部門を切り離すよう求めている。
この提訴そのものに驚きはない。司法省とグーグルの対立は、何も現在に始まったことではないからだ。
しかし今回こそは本気で事業分割を狙っているようだ。なぜなら、グーグル支配の源泉である検索サービスに、大きな変革期が訪れようとしているからだ。
司法省が同社を提訴するのは、2020年10月に続いて2度目のこと。グーグルがインターネット検索・広告市場での独占を維持・拡大するために、反競争的な手段を用いてきたと指摘し、調査を進めてきた。今回は司法省に加えて8つの州も提訴に名を連ね、新たな指摘も踏まえたうえで、より強く分割を求めている。
アメリカのインターネット広告市場は3000億円規模とされているが、調査会社インサイダー・インテリジェンスによると、2022年の広告売上高に占めるメタとアルファベットの合計シェアは前年比2.5ポイント減の48.4%と下落傾向にある。
アマゾンやマイクロソフト、アップルとの競争が進んでいる証とも見られるが、一方でインターネット検索や検索履歴などと連動するウェブページ、サービス内での広告市場は約657億ドル(2023年見込み)の26.5%をグーグルが、系列のユーチューブが2.9%を占めている。
その背景には検索サービスそのものの寡占がある。Statistaが収集しているデータによると2022年12月末の検索シェアでグーグルは84.08%。この数字はかつての90%には及ばないものの極めて安定している。ライバルはマイクロソフトのBingだが、シェアは8.95%とその差は極めて大きい。
加えてグーグルは検索サービスを基礎に、各種サービスへの動線を引くことで市場を支配してきた過去がある。
多くの読者にとって最も身近な例は旅行手配だ。
グーグルが航空運賃の検索比較サービスの草分けだったアメリカ・ITA買収を発表したのは2010年のことだ。背景としてはマイクロソフトがITAのライバルであるアメリカ・カヤックと提携し、旅行手配検索の利便性で利用者を伸ばしていた時期と重なる。同じくマイクロソフトからスピンアウトした旅行手配サービスのエクスペディアとの連携も滑らかで、グーグルは「旅行手配」という限られたジャンルではあったが劣勢に回っていた。
このとき、検索市場の支配者が特定の航空チケット手配サービスを傘下に収めることで、旅行手配サービスのイノベーションが遅れると競合からクレームがついたが、最終的には2011年4月に条件付きで司法省が買収を承認している。
しかし、その後起きているのは航空チケットの手配だけではなく、ホテル手配やワンストップでの旅行に関する各種サービス、あるいは旅行先でのレストラン予約など、さまざまな場面、粒度においてのグーグル支配ではないだろうか。
旅行にまつわるさまざまなオンラインサービスを提供する事業者(OTA)が、グーグルの検索から排除されているわけではない。しかしオープンに参加できるとはいえ、グーグルの検索結果上位にはグーグルに広告を入れる業者のリンクが並び、またグーグルが独自に検索した結果を一覧性よく並べ、結果的に自社サービスあるいは自社とのつながりが深い事業者が目立ち、ライバルの検索結果が深いところに沈む。