【渋谷ハロウィンを負債から稼げる資産へ】警備費に1億円近くかけても経済効果は薄い、迷惑行為防止とマネタイズに必要なこと

2024.11.15 Wedge ONLINE

 訪日外国人の参加もあり、ここ数年でさらに過熱するハロウィン対応へ苦慮する東京都渋谷区は、2024年に駅前の巨大広告などで公式イベントとしての開催の休止を宣言し、路上飲酒の禁止などの規制を強化した。渋谷区は、ハロウィン対策費に例年7000万~8000万円(ピークの2019年は1億円)を計上し、路上飲酒禁止・酒類販売自粛要請の呼びかけや警備体制の強化などに取り組んでいる。結果的には昨年比で約2割増の約1万8000人が集まり、渋谷はハロウィンにおける集客力の強さを見せたが、必ずしもその盛り上がりほどの経済効果は生まれていないという。

路上飲酒の禁止など規制された渋谷ハロウィンだが、多くの人々が訪れた(WEDGE、以下同)

 若者に来てほしい地方圏にはうらやましい悩みに見えるが、規模は違えども国内には似たような問題を抱える地域は少なくないのではないだろうか。渋谷ハロウィンの発展とその課題に対し、海外の事例を参考にしながら、観光資源としての可能性を検討したい。

渋谷ハロウィンの歴史と特徴

 渋谷でのハロウィン仮装が広まったのは2000年代中盤からで、サッカー日韓ワールドカップや新年のカウントダウンなどを機に、イベント時は渋谷へ行くという習慣が若者の間で広がりだした。特にSNSが普及し始めた2010年代以降、参加者が急増。仮装して渋谷の街を歩き、スクランブル交差点やセンター街で写真を撮ることが主なアクティビティとして定着し、これが日本のハロウィン文化として独特な形に発展した。

 普段はシャイな日本人だが、こういったハロウィンのように仮装して普段とは違う自分をさらけ出し、はっちゃけることができるのが渋谷ハロウィン。普段はあまり見ることのない、路上での他人との交流や写真撮影などが見受けられる。

 渋谷ハロウィンの最大の特徴は「公式主催者がいない自発的な集まり」であり、特定の会場やプログラムがない点である。渋谷区、地域事業者、住民が意図しないうちに自然と盛り上がってきたイベントなのである。

ハロウィンで出るごみは、地域住民への影響は大きい(WEDGE)

 数十万人規模の人々が狭いエリアに集まるため混雑が発生し、毎年ゴミや騒音の問題、痴漢を含む治安悪化が懸念されてきた。18年には、軽トラ横転事件も起きた。

 自由に参加できる気軽さが魅力である一方、イベント自体の管理や秩序維持が難しいという課題もある。これからの観光では、地域がどのような観光客に来てほしいかを選択する必要があると言われているが、現時点の渋谷は全く来訪者が選択できていないのである。

 ハロウィンのエリア管理を望む声もあり、NHK前広場でイベントを開催したこともあるが、仮装姿でスクランブル交差点付近で写真を撮りたい人が多く、あまりうまくいかなかった。駅周辺でのイベント開催については、渋谷区は周辺で商売をしているビルや店への影響を考えると「非常にコストがかかる」ことから「不可能ではないと思うが現実的には難しい」という見解であった。

海外のハロウィンイベントとの比較

 「主催者がいない」という渋谷ハロウィンは世界的に見ても稀なイベントと言える。国内外では、どのようにイベントは運営されているのだろうか。

 米国・ニューヨークのヴィレッジ・ハロウィンパレードは、1974年に始まり、毎年多くの観光客が訪れる大規模なパレードである。このイベントは市の公認で、道路封鎖や警備、ゴミの管理が行われている。

 参加者も決められたルートに沿ってパレードを楽しむ。秩序が保たれつつも、自由な仮装が許される点が魅力である。渋谷ハロウィンとは異なり、会場が設けられ、参加者が集中的に活動することで、管理しやすくなっている。