【日韓関係への影響は?】韓国総選挙での与党大敗で前代未聞の事態に、尹政権との連携強化を

2024.05.02 Wedge ONLINE

 2024年4月11日付の朝鮮日報の社説が、韓国の総選挙に勝利した野党民主党は責任ある政治をやっていくべきだと述べている。

総選挙で敗北した韓国の尹錫悦大統領は、苦しい政治となる(ZUMA Press/アフロ)

 韓国で行われた第22回総選挙では、主要野党である「共に民主党」(以下、民主党)が過半数を制し、決定的な勝利を収めた。また、曺国(チョグク)の祖国革新党は10議席以上を獲得した。民主党の勝利は、単に自らの強さだけでなく、傲慢で無力とみられている尹政権や与党「国民の力」に対する公然の非難によるものと解釈すべきだ。

 民主党が議会で圧倒的多数を持つので、同党は一方的に法案を進めることが可能になる。一つの党による立法権の支配が8年続くことは前代未聞である。

 民主党が今回選挙の勝利を文句のない付託と解釈すれば、次の4年間はこれまでの4年間と同じことになる。4年前の総選挙で勝利した民主党は、立法上の支配力を使って、検察当局の力を削ぐために高官汚職捜査処を設置し、論争のある立法を強行した。

 それらの中には、公共放送をメディア側の利益に偏らせる放送法改正案、余剰米の政府購入を義務付ける穀物管理法等があった。また、今の議会では、特別検察の手続きについてさまざまな立法をして、その過程を政治的に利用しようとしている。

 これらのことは、次の大統領選挙まで続く可能性があり、多くの有権者が懸念している。有権者は、圧倒的支持を野党に与えることにより尹錫悦政権への失望を表明したが、不安が残る。多くの者が、絶対的な立法支配の可能性を懸念している。

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大統領による拒否権の可能性

 4月10日の総選挙では、300議席(一院制)のうち、野党民主党は系列政党を含め175議席(改選前156議席)と議席を増やし、与党国民の力は108議席(改選前114議席)と議席を減らした。文在寅政権の元法相曺国が結成した祖国革新党は、初めて12議席を獲得し、第三党に進出した。残る5議席を他の新党が占めた。保守政権党と議会野党の捻じれは一層厳しいものになった。

 上記の社説は、議会支配を強めた野党民主党に対し、「責任ある統治」を求める。4月11日付の中央日報の社説も、野党に対し、「これからは国政に責任を負う姿を見せるべき」と要求している。多くの人は再び激しくなる与野党対決、議会・政府対立を懸念している。

 韓国では、今回の選挙を与党の「大敗」、野党の「圧勝」、「与小野大」と呼んでいる。一時は、与野党接戦とみられていたので、尹錫悦政権や与党の衝撃は大きい。

 政権党にとり中間選挙は常に厳しいが、与党はもう少し善戦するのではないかと思われた。今後、人事の刷新が必要との見方がある。与党内から大統領批判が出て来る可能性もある。任期の折り返し点にいる尹錫悦大統領には、政権の立て直しが急務である。 

 新議会と政府の対立は一層激しくなるだろう。政権側の人事案や法案(労働、年金や教育等)はなかなか通らなくなり、議会は今まで以上に野党寄りの法案や事案(特別検察官設置等)を強行する可能性がある。要すれば、大統領は法案に拒否権を行使するだろう。

 そして、政治は段々と2027年の大統領選挙に向けて動く。大統領・政権はレイムダック化する。

 他方、野党民主党は、今回の勝利により復活し、代表の李在明は種々の不動産絡みの汚職捜査を受けているにも拘わらず、ほぼ完全に立場を回復し、次の野党大統領候補としての地歩を固めたと言える。民主党は、「李在明党に変貌した」とみられている。政治は、闘争型政治や復讐の政治、ポピュリズムの政治等、懸念される。