〈米大統領選の行方もカネ次第〉史上最高更新し続ける選挙資金、「小口」のバイデンと「大口」のトランプ、過熱する陣営の集金争い

2024.04.24 Wedge ONLINE

 資金規模だけを見た場合、バイデン氏側がトランプ氏側を5億ドルも上回ったことになるが、果たしてこれが、バイデン勝利の決定的要因でなったかどうかについては、専門家の間でも判断が分かれている。

 しかし、今回選挙では、前回以上のデッドヒートが予想されるため、バイデン、トランプ両陣営にとって、莫大な費用を賄うためにも、もっぱら、この「スーパーPAC」をさらに今後、いかに多く組織し、いかに多額の資金を集められるかが今後の選挙戦の重要な要素になるとみて、各方面への働きかけに躍起となっている。

 今のところ、バイデン陣営の代表的「スーパーPAC」として「Future Forward」、「Unite The Country」、トランプ陣営の「Make America Great Again=MAGA」の存在などがある。

 このうち、政治献金の監視組織として知られる「Open Secret」のデータによると、「Future Forward」はすでに2億5000万ドル、「MAGA」が5100万ドルをそれぞれプールし、TVやネット広告などの宣伝活動に乗り出す構えだ。

 その後も、バイデン陣営では、大口献金者を含めた集金活動が勢いを増しつつある。 「バイデン再選委員会」は去る4月6日、前月1カ月間だけで「9000万ドル以上」の資金を集め、手元の銀行プールも「1億9200万ドル」に達したことを明らかにした。

 この中には、小口献金も合わせ全米各州にまたがる160万人のバイデン支持者からの出資が含まれているという。

 同陣営の財務責任者も、米ニューヨーク・タイムズ紙とのインタビューで「気まぐれでうわついた世論調査ではなく、こうした実際に自分の懐からお金を出して応援してくれる人がいかに多いかが勝負の分かれ目になる。わが方の勢いは止まらない」として今後の資金集めにも自信を深めている。

 特に最近、バイデン陣営側のこうした動きに弾みをつける具体的きっかけになったとされるのが、去る3月7日、大統領自身が上下両院合同会議で行った今年の「一般教書演説」だった。

 大統領は全米で3200万人以上が視聴したといわれるこの重要演説を通じ、トランプ氏の名前こそ直接出さなかったものの、随所で「前大統領の負の遺産」に繰り返し言及、珍しく対立色むき出しの熱気のこもったものとなった。

 その姿勢がこれまで消極的だったといわれるバイデン支持者たちをいかに鼓舞したかを示す一例として、この演説終了後の24時間だけで、合計1000万ドル以上の個人寄付申し出があったことが指摘されている。

 さらに、同月28日夜、オペラなどの興行で世界的に有名なニューヨークの「Radio City Music Hall」で開かれたバイデン候補のための資金集め特別イベントでは、バイデン氏のほか、クリントン、オバマ元大統領も揃ってステージに登場、9800席の会場は熱心な支持者で埋め尽くされた。主催者側の発表によると、当日夜だけで集まった資金は2600万ドルに達したという。

劣勢挽回へトランプ陣営が大規模献金企画

 一方のトランプ氏は、これまで各州予備選段階で、ロン・デサンティス・フロリダ州知事、ニッキー・ヘイリー前国連大使ら他の共和党候補との指名争いに時間とエネルギーを割かざるを得なかったため、本選に向けての資金集めは出遅れた感があった。

 しかし、党指名がほぼ確実となった3月以降、陣営の財政担当チームが強化され、PR活動も本格化しつつある。

 予備選段階では特定候補への選挙資金配分を渋って来た「共和党全国委員会」(RNC)も、最近になってトランプ陣営との「共同預金口座」開設に踏み切った。その結果、3月末段階でのRNC側からの供出を含めた手元資金総額は、9300万ドルに達したことが明らかにされた。