――2023年は監督就任4年目を迎えます。就任1年目は最下位、2年目は日本一、そして3年目はセ・リーグを連覇したものの、日本シリーズでは敗れました。4年目を迎えるにあたって、監督業の楽しさ、難しさに変化はありますか?
髙津 「楽しさ」というと表現が正しいかどうかはわからないけど、やっぱり、「50歳を過ぎてもいまだに野球ができる喜び」は、さらに大きくなっています。現役時代と変わらずに、いつもハラハラドキドキできるのは幸せです。もしも、ユニフォームを脱いで解説者となっていたら、「今のプレーはこうでしたね」と、ハラハラドキドキすることもないと思いますから。だから、「楽しさ」というよりは「幸せ」という感じですね。自分はプレーはしていないけれど、「こんな54歳はなかなかいないぞ」と思いながらベンチに座っています。
――以前のインタビューで、「山田哲人や村上宗隆を率いる監督であることに誇りを持っている」と話していました。いい選手に恵まれて、「まさに監督冥利に尽きる」という思いもあるのではないですか?
髙津 まさにその通りですね。さかのぼって考えれば、広島工業高校に進んだこと、亜細亜大学に入団したこと、プロではヤクルトに入って野村監督に出会えたこと……。すべてが繋がって今があると思っています。今でも、石川(雅規)、ノリ(青木宣親)、哲人、ムネ(村上)、ヤス(奥川恭伸)とか、いい選手に出会えたことは、監督としての縁を感じるし、彼らがいたから優勝もできました。プロ野球には12人の監督がいるけど、誰もが哲人やムネに出会えるわけじゃない。その縁は大切にしたいといつも思っているし、せっかく出会えたのだから、彼らに幸せな思いをさせてあげたいと思っています。
――二軍監督時代には「育てるためなら負けてもいい」という発言もありました。そして、一軍監督となった現在、「育てながら勝つ」という新しいフェーズに挑戦し、着々と成果を挙げているようにも感じられますが、この点はいかがですか?
髙津 そういう実感はあんまりないですね。もちろん、「負けてもいい」とはまったく思っていないですけど、若い選手を起用するときには「できないことはたくさんある」と思って起用しています。長岡(秀樹)にしても、かなり我慢して使い続けました。そして、少しずつ結果を残すようになってきた。(内山)壮真も少しずつ一軍投手のレベルに慣れてきた。レベルの低い言い方になるかもしれないけど、木澤(尚文)もきちんとストライクが取れるようになってきた。ずっと使い続けることで、少しずつ形になっていく姿を見るのはすごく嬉しいことですね。
――やはり、「育てながら勝つ」のはそう簡単なことではないですか?
髙津 実際に、「育てながら勝つ」ことができているのかどうかは、僕自身ではなく、ファンの方に判断していただくことだと思っていますけど、若い選手を起用しながら、結果として2年連続セ・リーグ連覇を果たせたのだから、「これでダメだ」とは言えないし、若い選手を使いながら、いいシーズンを過ごせたとは思っています。