――キャプテンである山田哲人選手が不振にあえいでいます。「休ませた方がいい」「下位で気楽に打たせた方がいい」「一度、ファームでじっくり調整した方がいい」など、いろいろな意見が噴出しています。8月14日の対横浜DeNAベイスターズ戦では「一番・セカンド」で起用して、初球ホームランという場面もありました。
髙津 あんなことができるのが山田哲人ですよ。確かに今は、決して状態がいいとは言えないですけど、山田ですからね。山田哲人ですからね。そこを忘れてもらっちゃ困るなっていうのは思います。もちろん、山田だからこそ「もっとできるんじゃないか?」「こんな数字じゃダメなんだ」って言われたら、もうその通りだと思います。でも、山田哲人なんです。それがすべてだと思いますね。
――監督はこれまで、「エース」「四番」「クローザー」「キャプテン」「ベテラン」といった「選手の格」というものを重視しているように感じられます。その選手が、それまでに培ってきたものを最大限に尊重した上で、腹をくくって「あとは任せた」という姿勢が見受けられます。その点はどのように考えていますか?
髙津 僕は、その選手がそれまでに積み上げてきたものは絶対的に大事にしたいなと思っています。「今」はもちろん大切だけれど、「これまでやってきたこと」はもっと大事なのかもしれないとも思います。もちろん、年齢を重ねれば体力も落ちるし、技術も落ちるし、いろいろな面でかつてのようなプレーはできなくなることもあります。でも、その選手が築き上げてきたものは最大限に尊重したいという思いは強いです。もちろん、情に流されて結果が出ないというのは本末転倒なので、その点は気をつけながら見ています。
――昨年、青木宣親選手が不振にあえいでいたとき、「不振だからといって休ませるのではなく、出続けるのも青木の役割であり責任である」と話していました。山田選手に対してもそういう思いなのですか?
髙津 その通りです。これまでの彼の成績、経験からすれば、不振のときには人よりもしんどい思いもするでしょうし、バッティングにしても守備にしても、人よりもインパクトの残るプレーをするでしょうし、ものすごく責任の大きい立場だと思います。「普通の選手」と言ったら失礼かもしれないけど、哲人の場合は他の選手よりも、そうしたものを抱えながらプレーしなければいけないと思っています。
――7月にはマジックも点灯していたものの、2位からの追い上げも熾烈になっている現状、監督の中には「焦り」の感情はないのですか?
髙津 焦りというのはまったくないですね。もう、覚悟していましたから。だから、選手たちにも、コロナの離脱から戻ったときのミーティングで「覚悟しておけ」と伝えました。このミーティングでは言わなかったけど、「こんなにうまくシーズンが終わるはずがない」という思いはずっと持っていましたから。
――全体ミーティングでの「覚悟しておけ」という発言は、こうした状況を見据えたものだった?
髙津 そうです。その通りです。もう、それ以外ない。「このままでは終わらないよ」という覚悟を持ってほしいという思いで発した言葉です。まだまだ予断を許さない状況ではあるけれど、僕たちは目の前の戦いを一戦、一戦、大切に戦っていきます。引き続き、応燕をよろしくお願いします!