2021東京ヤクルトスワローズ 高津流 燕マネジメント

「チーム内ライバル」の存在が
競争心を育み、組織を強くする

少しずつ、理想の組織に近づきつつある

――確かに、チーム防御率もかなり改善されているし、今年から加わった新戦力、今年から台頭してきた若手投手など、去年までとはガラリと顔ぶれが変わりましたね。

高津 リリーフの近藤(弘樹)もそうですけど、新しい顔ぶれが本当に頑張っていると思います。逆に言えば、「今までいた人は何をしていたんだ」という思いもあります。厳しい言い方になるけれど、それぐらいの思いを自ら持ってほしいと思っています。

――そこで発奮することによって、いい相乗効果が生まれれば理想的ですね。

高津 そもそも、「組織」というのは、そういう形じゃなきゃいけないと思うんです。お互いが常に競争心、ライバル心を持って、競い合っていかないといい成果は決して生まれない。目の前のボールに集中することも大事だけど、それ以前にチームメイトのこと、ライバルのことも意識していてほしい。たとえ、山田(哲人)であっても、村上(宗隆)であっても、外国人選手であっても、その思いは忘れないでほしいですね。

――今季は、先発外国人投手がスアレス投手、バンデンハーク投手、サイスニード投手と3人が切磋琢磨する関係となっています。ここでも、ライバル心は当然あるでしょうね。

高津 3人の外国人先発投手には平等にチャンスを与えます。3人がみんな好成績を残すことが理想だけど、一軍登録枠の関係から、誰かを外す必要もある。そういう意味では、彼らの競争は熾烈だと思いますね。でも、チームとしては、それはとてもいいことだし、監督としても、もちろん「ゆとりがある」というわけではないけど、去年よりはずっと選択肢が増えたと思います。

――ファームでは石川雅規投手、高梨裕稔投手も、虎視眈々と一軍入りを窺っています。

高津 そうですね。彼らの存在はとても大きいと思います。たとえば、誰かがケガをした、調子が上がらない、疲労がたまっているとなったときに、「さぁ困った、どうしよう?」というのは最悪です。でも、現在のように、「石川にしようか、高梨にしようか?」といろいろな選択肢が浮かんでくる状態は理想的です。そしてそれは、今一軍にいる投手たちにとっても、うかうかできないという刺激にもなりますからね。

――組織として、理想的な状況が整いつつあるという実感はありますか?

高津 まだまだではあるけれども、「うかうかしているとすぐに誰かに代わられるかも?」「ライバルがファームでしっかりやっているんだ」という意識が浸透するのは、いい組織の条件だという気はしますね。

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プロフィール

髙津臣吾
髙津臣吾

1968年広島県生まれ。東京ヤクルトスワローズ監督。広島工業高校卒業後、亜細亜大学に進学。90年ドラフト3位でスワローズに入団。93年ストッパーに転向し、20セーブを挙げチームの日本一に貢献。その後、4度の最優秀救援投手に輝く。2004年シカゴ・ホワイトソックスへ移籍、クローザーを務める。開幕から24試合連続無失点を続け、「ミスターゼロ」のニックネームでファンを熱狂させた。日本プロ野球、メジャーリーグ、韓国プロ野球、台湾プロ野球を経験した初の日本人選手。14年スワローズ一軍投手コーチに就任。15年セ・リーグ優勝。17年に2軍監督に就任、2020年より現職。

著書

明るく楽しく、強いチームをつくるために僕が考えてきたこと

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2021年、20年ぶりの日本一へとチームを導いた東京ヤクルトスワローズ髙津臣吾監...
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