このように、弾み車が回る前からブレずにチームづくりをし続け、生活習慣から目標の描き方、陸上への取り組み方から練習方法まで、習慣化して定着するまで粘り強く指導し、直近8年間で6度優勝するチームにまで育て上げました。チームメンバーが入れ替わっても、代替わりしても勝ち続けられるのは、弾み車を回すことをイメージして、取り組み続けた結果です。
原監督の取り組んできた施策1つひとつは、じつは目新しいものではありません。しかし、成果が出るかわからない時代からブレずに、弾み車が回るまで粘り強く取り組み続けたことにこそ、青学のすさまじさがあるのだと私は思います。
いずれにしてもチームづくりという変化を起こすには、時間が必要です。だからこそ、抵抗勢力に負けない仕組み、そしてリーダーだけでなくメンバーそれぞれの気持ちを折れさせない工夫が必要なのです。
というわけで、気持ちを折れさせない工夫として何をすべきなのですが、それには5つのステップがあります。今回はその最初のステップを解説いたします。
組織を変えるときは、一気に全員を変えてはいけません。全員にアプローチしようとすると失敗するからです。ではどうすればよいのか。次のリストをご覧ください。
・上位2割 → 自燃型 … 自ら燃えてくれる人
・中位6割 → 可燃型 … 周りが燃えていると、飛び火して燃えてくれる人
・下位2割 → 不燃型 … 周りから燃やそうとしても燃えない人
これは「2:6:2の原則」というものです。組織を変革しようとするときに、その変革に共鳴し、自ら燃えてくれる人の比率は、2:6:2に分かれるという考え方です。
チームづくりに取り組むと、だいたい組織の2割くらいの人が、自ら燃えてくれる「自燃型」で、あなたについてきてくれるはずです。5人の組織なら1人、10人の組織なら2人、30人の組織なら6人です。
まず、皆さんのチームの上位2割の人数を出してください。そして、その人数を重点的に巻きこむと決めます。それ以外の可燃型、不燃型は、このタイミングでは関わりません。ただし、この上位2割の人数は絶対に2割を割ってはいけません。2割を割ると、改善のスピードがきわめて遅くなるからです。
この上位2割のメンバーにだけ、チームづくり施策を実行するというのがキモとなります。
目標を掲げたり、関係性をつくったり、主体性を高めるのは、この上位2割の人たちだけでいいのです。それ以外のメンバーは、この段階では積極的なアプローチをしてはいけません。
なお、この上位2割はどう選ぶべきかということなのですが、絶対に「能力やスキルで選ばないこと」が重要です。いわゆる仕事がデキる、能力やスキルが高い人を、上位2割に置いてしまいがちですが、それをすると、チームづくりは失敗します。
大事なのは「共感度」です。
あなたがやろうとしている目標、目指したい未来に共感し、一緒にその未来をつくっていきたいと思える人を選ぶのです。共感度も高くてスキルも高い人が理想ですが、能力やスキルだけが高くて共感度が低い人は、上位2割に絶対に入れてはいけないのです。