欧米エリートが使っている人類最強の伝える技術

ソクラテスも指摘していた!? 「電話せずにメールだけで用件を伝える」がじつは非効率な理由

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感情は復讐する

最後に、これは筆者個人の感想にすぎないかもしれませんが、それでも、あえて書かせてもらうと、そもそも万事をメールのやりとりだけですますようなコミュニケーションの仕方は、誤解を生む云々以前に、人を幸せにはしないと思います。

本連載で繰り返し触れてきたように、弁論術の祖・アリストテレスは、相手を言葉で動かすための要素として、「内容の正しさ(=ロゴス)」の他に、「聞き手の感情(=パトス)」、「話し手の人柄(=エトス)」という二つを掲げました。

アリストテレスといえば、哲学者の中でも「ロジカルの鬼」であり「論理の天才」のような人物です。それでも、人と話をするのに「話の内容さえ正しければいい」とは言わず、ちゃんと聞き手の感情へのケアも視野に入れていた。

ここが彼の弁論術の素晴らしいところです。では、仮に論理と正しさだけで物事をすすめようとすれば、どうなるか。

感情に復讐されるのです。

人を説得する際に、論理と正論だけで聞き手の気持ちをねじ伏せたり、他人の感情的な意見を無内容な雑音のように扱っていれば、その抑圧された気持ちはどこかで爆発するもの。どんな反動に結びつくか分かりません。感情に理屈は通用しないのです。

結果としても、誰も幸せにならない。

そういった意味でも、感情込み、ニュアンス込みの話し言葉のコミュニケーションはないがしろにできない。そして、お互い、ときには感情的になるぐらいのほうが無理がない。そう筆者は思います。

※一年間続いてきた本連載も今回で最終回。ここまでお読みくださってきた読者の皆様に感謝して、筆をおきたいと思います。

 

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プロフィール

高橋健太郎
高橋健太郎

横浜生まれ。古典や名著、哲学を題材にとり、独自の視点で執筆活動を続ける。近年は特に弁論と謀略がテーマ。著書に、アリストテレスの弁論術をダイジェストした『アリストテレス 無敵の「弁論術」』(朝日新聞出版)、キケローの弁論術を扱った『言葉を「武器」にする技術』(文響社)、東洋式弁論術の古典『鬼谷子』を解説した『鬼谷子 100%安全圏から、自分より強い者を言葉で動かす技術』(草思社)などがある。

著書

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