このミーティングを機に、新任リーダーは「自分の振る舞いには一方的な価値観の押し付け、思い込みがあった」ということに気づきました。そして、その後はメンバーたちと相談しながら、このチームのよりよい運営とはどんなものかを考えるようになったのです。
そうして考え方を改めてみると「なぜ自分の目にはメンバーの仕事ぶりが物足りなく映ったのか」ということが、リーダー自身の中でだんだんわかってきました。それは、職種の違いや社内での役割の違い、仕事に取り組むうえでの優先順位の違いといったことで、それが今まで自分が経験してきたこととは異なっていたのです。
また、もうひとつわかったのは、このチームでは「もっと稼ごう」ではなく、「もっと効率をよくしよう」「もっと社員に喜ばれることをしよう」と言った方が、メンバーのやる気が高まるという事実でした。
こうして、なんとか新任のリーダーがチームの空気を理解したことで、全体の仕事のレベルは少しずつ上がり始めたのです。このチームでの「上を目指そう」という言葉の意味もメンバーにとって明確になり、それがメンバー同士で共有されるようになってきたのです。「上を目指す」という価値観は、部署によってさまざまであり、前の部署の価値観を当たり前だと押し付けた新任のリーダーは、それを理解して改善することで、なんとかチームの団結力を高めることに成功しました。
このように、自分にとってモチベーションが上がることであっても、他人にとってはそれがストレスにしかならないことがあります。このケースでは、リーダー自身が自分の思い込みに気づいたことで、チームはいい方向に回り始めましたが、もしもリーダーが自分自身の問題を見落とし、自分は変わる気がなく、自分の価値観に周りを巻き込もうとし続けていたとしたら、どんなに良いチームでも、その空気はあっという間に崩れてしまいます。
チームの空気を作り上げるには地道な行動や言動の積み重ねが必要ですが、逆にそれが壊れてしまうのは、本当に一瞬のことです。特にリーダーは、その振る舞いでチームの空気を簡単に壊します。自分のペースに引き込むことだけがリーダーシップではありません。自分の思い込みにとらわれず、自分の価値観だけにこだわらず、チームの状況を冷静に見極められなければ、真のリーダーとはいえません。
メンバーの話をよく聞き、行動をよく観察し、本質的な現状把握を心がけてください。チーム作りのスタートは、まずそこからなのです。
次回に続く