リーダーの立場になると、何かと「他のメンバーより優れていなければならない」「自分の方がやらなければならないと」などと思い込みがちです。特に現場の実務に関しては、こうした意識を持つ人が多いのが事実です。しかし、最初の事例のように、優れたリーダーは、結果的に無理を強いてしまう「弱音が吐けない環境」をつくり出してしまう場合もあります。これは「本音が言えない環境」であり、言い換えると「メンバーが弱みを見せられない環境」でもあります。これでは、「コミュニケーションが悪い組織」「助け合いがない組織」「ノルマが厳しすぎる組織」と、実はあまり変わりがありません。
この最初の事例に登場した“できる”リーダーに悪気はありません。むしろよかれと思ってやっているのですが、それが彼の問題点でした。「普通のメンバーはそんなに何でもできるものではない」ということへの理解が足りなかったのです。自分に厳しい人は、それが無意識であっても、他人にも同じことを求めてしまうことがあります。自分の基準で励ますばかりでなく、もう少しメンバーが甘えられる環境を合わせてつくっていればよかったのです。
これに対して、二つ目の事例にあった自称“できないリーダー”は、自分が万能ではないことや、劣っている部分があることを認め、自分にできることをメンバーの気持ちになって真面目に行うことで、結果的にはメンバーからの信頼を得ているのです。リーダーが自分の弱みを見せられることが、メンバーにとって「本音が言える環境」につながっているのでしょう。
もちろん、リーダーとメンバーそれぞれの性格やお互いの関係性、業界、仕事内容、組織風土などによって一概には言えませんが、重要なのは、きちんとメンバーの立場になって、メンバーの気持ちを考えることです。それが「リーダーが空気をつくる」という意味で、大切な第一歩といえるでしょう。そのためにもリーダーは、まずメンバーと本音で話し合える信頼関係をつくることから意識・実践するのをおすすめします。
次回に続く