人事の超プロが教える、リストラ時代を生き抜く戦略

今の部署がツラい……中高年社員が「異動」を望むのはアリかナシか

本当に辛いのなら、部署異動を希望しましょう

「今の部署が辛い……中高年社員でも部署異動を望むのは現実的にありなのでしょうか?」
このようなご相談をいただきました。今回はこの質問にお答えしたいと思います。

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まずは、何が辛いのでしょうか? 人間関係か、仕事への適性がないと思っているのか、仕事が面白くないのか、仕事がキツいのか、逆にラクチンすぎるのか。考えられる理由は、ほぼそんな感じでしょうか。

いずれにしても、「あり」か「なし」かでいえば、「あり」です。中高年社員であっても、本当に辛いんだったら、異動を望んだらいいのではないでしょうか。

会社だって「辛い」「辛い」と思って働いてもらうよりは、機嫌よく働いてもらったほうがいいので、それは正直に伝えていいと思います。

上司との折り合いが悪い場合もあるので、折り合いの悪い上司に「このままここにいたくないです」と言うのは厳しいかもしれませんが、本当に辛いのなら、部署異動を望むべきです。その希望が叶うか、叶わないかは別として。

ただ、中高年といえば、もういい大人です。「辛いので楽なところに行かせてください」だったら、覚悟したほうがいいでしょう。給料が落ちるかもしれませんし、もっとしんどい部署に行かされるかもしれません。

そこは状況をよく見て「異動したら本当に活躍できるんだっけ?」ということを、よくよく考えてみてください。異動先でも同じことが起きると、もう次はなくなるかもしれません。「今が辛い」だけじゃなく、「何をしたいのか」「何で組織に貢献できるのか」ということをしっかりと考えて、部署異動を申し出てみてください。

異動を希望するなら理由が重要。そのための棚卸しも必要

部署異動を希望するなら、その理由が重要になります。
「自分はこういう仕事をやっていて、こういう経験があるから、それを活かして、こういう仕事をしたいです」と言って異動願いを出すのは、全然「あり」です。

会社も社員にそういう行動を望んでいますが、言ったことには責任を持たなくてはいけません。異動して次のところでダメだったら、降格対象になります。中高年の場合は、黒字リストラの対象になることも覚悟しておかなければいけません。

それでも本当に辛いのなら、ガマンしなくていいのではないでしょうか?

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部署異動ではなく、会社を辞めるのもひとつの方法です。あなたは何かしらの経験を持っているのですから、年収が下がることさえいとわなければ、転職先はあります。転職して活躍すれば、年収だって上がるかもしれません。

仕事が辛くて自殺してしまったという報道も少なくありません。こうした事件が起こるたびに、「だったら辞めれば良かったのに…」と胸が痛みます。ガマンして悩みすぎて自殺してしまう。そんなことになってしまうのなら、他の場所を探すべきです。

今は昔とは違います、会社を移ってキャリアアップするのは当たり前の世の中です。中高年であっても、転職先はあります。

日本は平均年齢が50歳になろうとしているのです。「50歳だから異動はできません」とか「50代だから転職先はありません」なんてことはないのです。

人口減少時代が始まり、どの企業も人手不足で苦しんでいます。地方は特に人手不足が深刻ですから、Iターン、Uターンという選択肢だってあります。

本当に辛いのなら、異動や転職を現実的に考えてみてください。部署や会社に縛られる必要なんてないのです。今までやってきたことを棚卸しして、自分は何ができるのか、何がしたいのか、しっかり整理して、異動希望をしたり、転職活動をしてみてください。

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プロフィール

西尾 太
西尾 太

人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。
1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。
これまで1万人超の採用面接、昇降格面接、管理職研修、階層別研修、また多数の企業の評価会議、目標設定会議に同席しアドバイスを行う。
汎用的でかつ普遍的な成果を生み出す欠かせない行動としてのコンピテンシーモデル「B-CAV45」と、パーソナリティからコンピテンシーの発揮を予見する「B-CAV test」を開発し、人事制度に活用されるキャリアステップに必要な要素を体系的に展開できる体制を確立。これまで多くの企業で展開されている。また2009年から続く「人事の学校」では、のべ5000人以上の人事担当者育成を行っている。
著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎的知識。8つの心構え』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『プロの人事力』(労務行政)、『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(アルファポリス)、『超ジョブ型人事革命 自分のジョブディスクリプションを自分で書けない社員はいらない』(日経BP)などがある。

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