結局、低姿勢こそが最強のビジネススキルである

結局、「低姿勢」こそが最強のビジネススキルである

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いま優秀な人も、いずれ窮地に立たされる


さて、本連載では「低姿勢」に加え、「優秀で威張っている人も、いずれ窮地に立たされてしまう……」といった例を具体的に提示していく。

これまでに多くの会社員、公務員、フリーランス、経営者と会ってきたが、若い頃イケイケドンドンで自信たっぷりだった人物が30代後半になると借りてきた猫のようになっていたり、社内の出世レースから脱落したり、自営を諦め就職する様を見てきた。

2000年代前半にはツイッターもFacebookもなかったため、こうした人々のオラオラぶりを見ることはなかったが(若干GREEにその芽はあった)、昨今NewsPicksやFacebookがあるために自信たっぷりの優秀(風)な人々のオラツキと意識高い投稿に怖気づく人もいるのではないか。少なくとも私はそうである。

ビジネスクラスの乗客か会費の高いカードを持つ者他特権所有者にのみ許された空港のラウンジの使用を投稿したり、「第2QのMVPを獲得し、今宵はドン・ペリで社長から祝ってもらってます」みたいな写真を投稿する人を見てソッとブラウザーを閉じ、「さて、トイレに行って寝るかな……。夢ぐらいは楽しいものをみたいものだ」となる。

こうした感覚を抱くのは、私としてはごく普通のことだと思っている。SNSの発展により、我々は「24時間採点社会」に身を置かされるようになった。ここではいかに自分が優れているか、活躍しているかのアピールをさりげなくする「控え目自慢道」の有段者が続々とその技を競っている。

こんな競争からはさっさと降りてしまおう。あと、いちいち他人とあなたを比較しないでもいい。他人の人生を羨む人生ほど虚しいものはないと理解しよう。

私は、これまでに調子の良かった人々が途端にバタバタと存在感をなくしていくのを嫌というほど見てきた。そうした人が、かつて見下す対象だった私と10年ぶりぐらいに会うと「いやぁ……お、お元気でしたか? あ、あの時は……」なんていう微妙な空気になる。この時、我々2人の間だけに通じる心のテレパシーがある。大方このようなものだ。


彼:
やっべーところで会っちまった……。オレ、こいつのことを同業者として下に見て使い走りのような扱いしていたんだよな……。

私:
あの時はオレに無粋な扱いしたのを覚えてますかね……。オレがペコペコしていたからって使い倒してくれ、罵倒してくれましたよね……。


お互い会いたくもない関係性ではあるのだが、会ってしまったのならば仕方ない。ただ、この時かつて低姿勢だった方が圧倒的に上に立てるのだ。

高圧的な態度を取っていた側は勝手に「今のこいつの方が今のオレより上だ。立場は逆転した」と考えがちである。すると妙に卑屈になってしまうのである。「低姿勢」と「卑屈」は別である。先に上げたのはあくまでもテレパシー的やり取りだが、実際の会話はこうなる。


彼:
あ……、どうも、お久しぶりです。お元気でしたか……?

私:
あぁ! どうもどうも! お元気ですか! いやぁ、久々にお会いできて嬉しいっス!

彼:
えぇ……、まぁ、ボチボチと……。今、私、こういう仕事をしておりまして……(と名刺を差し出す)。

私:
ありがとうございます! お元気そうで何よりです!


こちらは純粋に久々に会えて嬉しかったりもするのだが、相手は自分の方が現在の立場が下だと思い込んでいるから歯切れが悪い。さらにいうと、過去に高圧的だった負い目があるからなのか、妙に恐縮している。常に低姿勢であった者は、将来会ったとしてもそんな姿勢にならない。あくまでも再会を喜ぶだけである。

チャレンジ精神に溢れ、ガッツのある経営者のキラキラした言葉を読むのも良いだろう。だが、自分は果たして彼らほどの賭けができ、リスクを取れるか? 大成功というものはそこからようやく得られるものなのだ。

ちょっとした成功ぐらいであれば「低姿勢」でいるだけでなんとかなる。当連載ではそこらへんの仕事論・人生論・生き方・人間関係などについてゆるく書いていく。これからどうぞよろしくお願いいたします。

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プロフィール

中川淳一郎
中川淳一郎

1973年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。ライター、雑誌編集などを経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『縁の切り方 絆と孤独を考える』『電通と博報堂は何をしているのか』『ネットは基本、クソメディア』など多数。

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