真中流マネジメント

監督3年目のビジョンと采配――“目の前の1勝”をもぎとるための起用

2017.04.14 公式 真中流マネジメント 第25回

これまでの私は、絶対エースの石川という存在がありながらも、「将来のことを考えて経験を積ませたい」という思いから、2015年、2016年と小川泰弘を開幕投手に指名していました。ですが今年は、最初に述べたように「目先の一勝にこだわる」という意味で、勝利に一番近づける可能性のある石川に託すことにしたのです。この起用こそが、開幕から「一戦一戦を確実にモノにしていくぞ」という選手達へのメッセージでした。結果、石川はその期待に見事に応えてくれました(3月31日・横浜DeNAベイスターズ戦6回2失点で勝利投手に)。

最初に「ビジョン」を共有し、戦が始まったら戦い方や起用法を通して監督としての意志を伝えていく。そんな風に、直接口にして伝えるべきところとそうでないところを見極めながら、選手の士気を高め、シーズンを戦っていければと思っています。

最後に、私が考える今年のヤクルトの「投打のキーマン」をご紹介したいと思います。打者の主役はもちろん山田哲人。前人未到の2年連続トリプルスリーを達成し、先日のWBC・侍ジャパンでも中心選手として活躍した日本を代表するスター選手です。彼が普通にプレーしてくれれば、今年も間違いなく成績を残してくれるでしょう。でも、ちょっと調子が悪くなるとシュンとしてしまう部分もあります。まだ24歳の彼にそこまで求めることは酷かもしれないけれど、彼にはそろそろ背中でチームを引っ張っていけるようになってほしい。WBCに出場したことによって、より高いレベルの野球を経験し、彼の中にも「ワンランク上を目指したい」という思いも芽生えたことでしょう。そういう意味でも、「打のキーマン」として山田を挙げたいと思います。

続いて、「投のキーマン」は秋吉亮です。秋吉もまたWBCで見事なピッチングを披露しました。3年連続で60試合以上に登板し、今年4年目にもかかわらず、今では救援陣の中心です。彼はメンタルも強いので、若手投手の手本となるべくチームを引っ張ってほしいと思います。

僕もこれからもっともっと勉強をして、この連載を読んでくださる方が楽しくなるようなこと、参考になるようなことを率直にお話したいと思っています。2年目の今季もどうぞよろしくお願いいたします。

取材協力:長谷川晶一

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プロフィール

真中満
真中満

1971年栃木県大田原市出身、宇都宮学園高等学校を経て日本大学卒業後1992年にドラフト3位で東京ヤクルトスワローズに入団。
2001年は打率3割を超えリーグ優勝、日本一に貢献。2008年現役を引退。
2015年東京ヤクルトスワローズ監督就任1年目にして2年連続最下位だったチームをセ・リーグ優勝に導く。
2017年シーズン最終戦をもって監督を退任。

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