真中流マネジメント

人材は組織の“財産”――監督・真中満がチームに残したいもの

2017.01.13 公式 真中流マネジメント 第20回

真中監督が考える自分自身の“これから”

お世話になった野球に対する恩返しの思い
強い「志」があれば何歳からでもチャレンジできる

さて、ではこの先、もし監督を辞めたら何をするか。これはとても迷いますね。まず、今の監督という仕事については、偉そうに聞こえるかもしれませんが、自分はそれなりに向いていると思います。私は基本的にはものすごく飽き性ですので、たとえばバッティングコーチやピッチングコーチのように、特定の分野について毎日コーチングすることよりも、全体を総合的に眺める仕事のほうが適しているように思うんですね。

「監督後」の進路は、大きく分けて、球団に残って今までと違う立場でチームに関わるか、あるいは球団以外の場所で野球の仕事をするか、の2つでしょうね。これまでずっと、ヤクルトに、そして野球にお世話になってきたわけですから、“恩返ししたい”という強い気持ちがあります。

一方で、飽き性というのはよく言えば「好奇心旺盛」ということでもありますから、上記以外にもいろんなことに挑戦できたらいいなという漠然とした考えも持っています。ただ、では何ができるかというと、いかんせん野球ひと筋の人生でしたから、具体的にこれといったイメージがない。それでも“食いつなぐためだけの仕事はしない”、このポリシーだけは守ろうと思っています。

このように、今後の進路については、現時点では何も決まっていないようなものですね。ただ、ずっと野球をやってきて、監督の仕事まで経験させてもらって、「今後もう野球はやりません」というのはちょっと自分勝手かな、とも思います。おこがましい言い方かもしれませんが、自分が培ってきたものを、野球界に還元するというか、次世代に伝えるというか……そういう責任はあると感じていますね。

野球に関わり続けるにせよ、そうでないにせよ、自分の“これから”を考えるとき、私はいつも、江戸時代に全国を測量して日本地図を作った伊能忠敬を思い出します。彼は、60歳近い年齢になってから測量を志し、自分の足で全国を歩いて、日本地図を作っています。でも、それまでの人生では、まったく別の仕事をしていたというんですね。

彼のように強い「志」があれば、何歳からでも新しいことを学べるし、行動を起こすことができる――伊能忠敬の生涯を思うたび、「俺もまだまだやれるんじゃないか」という気持ちが高まります。泣いても笑っても、人生は1度きりですから。今後どのような道に進むにしても、悔いの残らない、充実した日々を送りたいと思いますね。

取材協力:高森勇旗

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プロフィール

真中満
真中満

1971年栃木県大田原市出身、宇都宮学園高等学校を経て日本大学卒業後1992年にドラフト3位で東京ヤクルトスワローズに入団。
2001年は打率3割を超えリーグ優勝、日本一に貢献。2008年現役を引退。
2015年東京ヤクルトスワローズ監督就任1年目にして2年連続最下位だったチームをセ・リーグ優勝に導く。
2017年シーズン最終戦をもって監督を退任。

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