また、誤算だったのは当初思い描いていた「勝利の方程式」が、うまく機能しなかったことです。当初は、新加入のギルメットをクローザーとして考えていました。そして、「7回・ルーキ、8回・秋吉亮、9回・ギルメット」の布陣で臨む予定でした。多少の順序変更はあるかもしれないものの、「この3投手でしっかりと試合を締めれば勝てる」と考えていたのが、ギルメットがなかなか調子を発揮せず、早々に軌道修正を余儀なくされることになりました。
また、今年の低迷の要因として「選手たちの自主性に任せすぎた」という批判もありました。しばしば「ヤクルトは仲がいいファミリー体質だ」と言われます。しかし、いくら仲が良くても、レギュラーを勝ち取り、給料を上げるためには、他の選手は誰もがライバルであることには変わりません。「自主性」ばかりが批判されたけれど、実際のところすべてが自分の責任に任される自主性ほどきついものはありません。
そして、さらに誤解されているのは「自主性」と言っても、コーチが何も指導しないで選手たちに任せきりだ」というわけでは当然ありません。若い選手たちについては、「こういう課題があるから、こういう練習をしなさい」ということはもちろん伝えてあります。監督を務めた3年間。僕の指導方針は何も変わっていません。セ・リーグ制覇を果たした2年前は「自主性野球の成果だ」と持ち上げられ、2年が経つと「自主性だから選手が怠けてしまう」と批判される。プロ野球は結果の世界ですから、それも仕方ないことかもしれません。しかし、僕が万が一またユニフォームを着ることになったとしても、「自主性」を重視したチーム作りをすることと思います。
改めて述べるまでもなく、今季の低迷のすべては監督である僕の責任です。ここで挙げた課題、反省点を踏まえて、来季こそ飛躍を目指してほしいと心から願っています。それでは、次回は今後のヤクルトへ期待すること。そして、僕からの本当のラストメッセージをお届けしたいと思います。ラスト1回、最後までよろしくお願いいたします。
取材協力:長谷川晶一
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