先に挙げた「15年優勝の要因」で言えば、17年シーズンはすべてが正反対でした。つまり、①故障者が多かった、②広島が圧倒的な強さを誇っていた、③打撃陣が本調子にはほど遠かった、④リリーフ陣が不安定だった……。やはり、負けるべくして負けたと言わざるを得ません。では、わずか2年でここまでの大敗を喫した要因を考えてみたいと思います。
優勝の翌年、つまり2016年は、冷静に振り返ってみれば僕も含めたチーム全体、そしてフロントに浮かれた気分があったのは事実です。オフの間も、さまざまなイベントに呼ばれることが増え、ゆっくりと休養を取ることもできませんでした。そして、バーネットやロマンが抜けた穴を埋めることなく、きちんとした補強を行えていませんでした。打撃陣に関しても、「15年はほとんど出場できなかったバレンティンが復帰するから心配はない」と楽観視していたのも事実です。その一方で、前年度優勝チームに対して他球団からのマークもかなりきつくなっていました。
つまり、16年は低迷の理由、課題が明確だったため、就任3年目となる17年はきちんと対策をして臨みました。前年の反省から、浮かれ気分は一掃しました。また、オーレンドルフという実績のある投手も獲得しました。途中加入のリベロも含めて、ブキャナン、ギルメット、ルーキ、グリーン、バレンティンと外国人選手を7名獲得したわけですから、球団としても全面的に協力してくれたのは間違いありません。
正直なことを言えば、2月のキャンプの時点では「今年は楽しみだぞ」と手応えを感じていました。ところが、キャンプ時にすでに川端が故障で大幅に出遅れ、畠山が本調子ではないままシーズンに臨むことになりました。その後、大引啓次、バレンティンなど、故障者が相次いだことで、チームトレーナーや球団の体調管理への批判が相次ぎました。
しかし、僕自身の率直な考えを言えば、12球団のトレーニングコーチ、トレーナーの実力や能力に大きな違いがあるとは思えません。たとえば、基本的にはトレーナーというのは「故障した後のケアを担当する人」だと、僕は考えています。いくら優秀なトレーナーでも突発的なケガを防ぐことはできません。
今年のヤクルトは故障者が相次ぎました。その原因を探すとすれば、僕は「選手の自覚の欠如」だと思います。厳しい言い方になりますが、デッドボールや自打球による負傷など、どうしても避けられないケガを除けば、本人の自覚によって防げるケガもあるはずです。レギュラー選手であるならば、一年間ケガなく働けるような身体作りをオフシーズン、キャンプ期間に作り上げなければなりません。あえて個人名を出しますが、川端や畠山に、その自覚はあったのか? そこは改めて各人が問い直してほしいところです。
もちろん、「自覚」だけではケガは防げないかもしれません。けれども、石川雅規のように長い間、大きな故障をすることなく活躍する選手もいますし、90年代、野村克也監督の下で黄金時代を迎えた際には主力選手のほとんどがシーズンを通じて働いていました。そこには間違いなく「レギュラーとしての自覚」があったことは事実です。その姿を若い選手も見ていて、それがチームとしての強さにつながったのではないでしょうか?
さらに、学生野球と併用している神宮球場の環境、あるいは練習施設について、「満足な練習ができないから故障する」という指摘もありました。でも、我々ヤクルトの選手たちは長い間、この球場、この環境で試合を行ってきています。今年から環境が変わったのならともかく、故障者が多発したことを施設面のせいにするのは言い訳だと僕は思います。