真中流マネジメント

三木肇ヘッドコーチが語る真中ヤクルト①
~選手を助け、監督を後押しするNo.2の役割~

2017.05.12 公式 真中流マネジメント 第27回

ナンバー2がきちんと機能する組織は強い

上司には、あえて「反対」の立場をとり、
部下には、雑談を通じて「共感」の立場を

若い頃から仲の良かった真中さんですが、もちろん仕事となれば公私混同はせず、「ナンバー2」としての自分の役割に徹するようにしています。その際に僕が意識していることは、状況や相手に応じて「態度」を選択していくということです。

例えば、監督とコーチ陣とのミーティングがあったとします。先述したように、真中監督はコーチ全員の意見をよく聞いてくださる方なので、まずは僕自身もそれぞれが意見を出しやすいような空気作りを心がけます。

そんな中で、なんとなくコーチの大多数が、監督の意見に「イエス」と頷きそうな空気に流れているなと感じたときは、思い切って逆の立場に立って意見したりすることもあります。「ノー」の意見が出ることで、議論がより活発になったり、新たな問題点や課題が浮き彫りになったりするときってあると思うんですね。そんな空気を感じたときは、僕が率先して「ノー」を表明して、監督に意見を申し立てたりすることもあります。

そういった態度の選択は、選手たちとのコミュニケーションでも同じです。ちょっと元気がなかったり、状態が気がかりな選手がいたとして、その選手に何かを伝えたい、あるいは本音を探りたいというときには、あえて本題に入らずに、「昨日は何を食べたの?」とか、「子どもは元気?」などと、世間話から入ることも意識しています。それは、「どのタイミングでこれを告げようか、状態を尋ねようか?」と様子を窺うためです。結果的に、「今、このタイミングじゃないな」と思えば、何も言わずにそのまま立ち去ることもあります。逆に、「ここは厳しく言わなければダメだ」と判断した場合は、グダグダと世間話などはせず、単刀直入に「これはダメだ」と伝えます。

そのように、意識的に逆の立場をとったり、選手たちの雰囲気や状態を見ながら接し方や言葉の掛け方を変えたりするのも、ヘッドコーチである僕の役割の一つだと思っています。

ヘッドコーチとは、そうやって相手に応じて異なる対応が求められる役職だと思いますから、その分大変な役割だと思いますし、だからこそ「ナンバー2がきちんと機能している組織は強い」と、僕は考えています。つまり、ヤクルトで言えば、僕がしっかりと機能すればチームの状態は上向くのだと信じて取り組んでいます。

最初に述べたように、僕の周りには、上には監督が、下には選手がいて、横にはコーチたちがいて、その間にヘッドコーチとしての三木肇が存在しています。このように、それぞれ立場の異なる人たちと、「優勝する」という目標に向かって進んでいくわけです。当然、「対監督」、あるいは「対選手」に対して、それぞれアプローチ方法は異なります。そこで、次回は「対監督」について、僕が心がけていること、注意していることをお話ししたいと思います。

取材協力:長谷川晶一

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プロフィール

真中満
真中満

1971年栃木県大田原市出身、宇都宮学園高等学校を経て日本大学卒業後1992年にドラフト3位で東京ヤクルトスワローズに入団。
2001年は打率3割を超えリーグ優勝、日本一に貢献。2008年現役を引退。
2015年東京ヤクルトスワローズ監督就任1年目にして2年連続最下位だったチームをセ・リーグ優勝に導く。
2017年シーズン最終戦をもって監督を退任。

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