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前世の記憶を持って生きる朱崎桃理には、人には言えない秘密があった。
それは自分は猫の生まれ変わりであるということ。
雨の日に決まって見る前世の夢に魘される日々に眩みながらも、桃理は今日も夢の中で猫を通して世界を見ていた。
夏休みの半ば、学校から出された大量の宿題を消費しようと地域の図書館に向かっていた時、目の前でふらつく人影を見かけた。
点滅する信号を駆け抜け、間一髪のところで倒れてしまったその人を支えた瞬間、突然の通り雨に見舞われてしまう。
彼を涼しい場所で休ませようと急いで図書館まで向かうも、今日は休館日だったらしい。
仕方なく桃理は近くのベンチで彼を休ませることにした。
雨と湿気で張りつき、うっとうしそうな前髪を触れた時、桃理はあることに気がついた。
倒れた彼が、前世で猫の頃に拾ってくれた恩人――安里湊人だということに。
出逢えたと思えたのも束の間、湊人に似た彼は目覚めた後すぐに帰ってしまったために、桃理は再び彼との繋がりを断たれてしまう。
それから数日が過ぎ、課題提出のため出校日に高校へ赴くと、渡り廊下の先で湊人と思しき人物を見かけて――?
文字数 17,290
最終更新日 2025.04.22
登録日 2025.03.27
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