灰流うらら

灰流うらら

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ソラと妹のレイが生き延びるのには、あまりにも過酷な世界だった。 最初はたった1滴だった。 今は空を埋め尽くしている星も。 今は海に溢れている水も。 今は何億人もいる人間も。 あの犬たちだってきっとそうだったんだろう。最初の1匹が病気を持っていた。 そのたった1匹から全てが始まった。 人に感染すると体を蝕み、全身の血液を黒く染めてから死に至らしめる「シズク」というウイルスも、誰も知らないどこかで最初の1滴が生まれたのだ。 「シズク」に侵された人は病気で死ぬ前に軍に殺される。秩序の失われた世界では、自分が生き抜くために誰もが手段を問わない。 そうやってこの国の人口は4分の1にも減っていった。 子供なんてほとんどが死んだ。 ソラの友達もみんな死んだ。 それでもソラはレイを守るため生き抜くすべを学びながら、ある場所を目指した。 希望はそこにしか無かった。
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文字数 2,673 最終更新日 2019.12.18 登録日 2019.12.18
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