第7回絵本・児童書大賞
選考概要
編集部内で大賞候補作としたのは、「ROBOT HEART 【3】」「すべてはあなたの笑顔のために! ~見習い司書、頑張ります!~」「恩田博士と生まれ変わりの機械たち」「モモノモノマネ」「永遠の王国 うさぎ王国」「賢鼠、獅子をして百獣の王ならしめる事」「クロック ~猫と騎士と赤髪の魔女~」の7作品。
選考の結果、いずれもそのまま出版化するのは難しいと考え、編集部内で支持の高かった「すべてはあなたの笑顔のために! ~見習い司書、頑張ります!~」「賢鼠、獅子をして百獣の王ならしめる事」の2作を特別賞に選出することとした。
「すべてはあなたの笑顔のために! ~見習い司書、頑張ります!~」は、不思議な図書館に迷い込んだ一人の少女が、見習い司書として、悩みを抱えた利用客の本探しの手伝いをするという物語。図書館や司書という本好きの児童に好まれそうな設定、また、広大な書庫を魔法の絨毯で行き来したりといったファンタジックな要素が高く評価されたが、肝心な利用客とのストーリーに物足りなさがあるのがマイナスだった。
なお、本作のヒロインは女子高生であり、児童書の主人公としては年齢が高いが、小学生の女の子に変更したと考えた場合でも、完成度は一定レベルにあると判断し、授賞を決定した。
「賢鼠、獅子をして百獣の王ならしめる事」は、横柄な態度だったライオンが、賢いネズミに導かれ、最後には様々な動物達に慕われる、真の百獣の王に成長するという童話。やさしさ、友情といった児童にもわかりやすいテーマが、ライオンの心の変化を通して非常に丁寧に描かれた作品であると好評を集めた。ただ、この作品は絵本として読みたくなるストーリーであり、絵がついていないのが惜しかった。
なし
ROBOT HEART 【3】
すべてはあなたの笑顔のために! ~見習い司書、頑張ります!~
「魔法の図書館」「見習い司書」という親しみやすい設定に加え、書庫内の移動に使われる空飛ぶ絨毯や魔法のコンパスなど、わくわくする小道具が出てくるのが魅力的です。詩織、エノク、立川の掛け合いも読んでいて非常に楽しいものでした。主人公を小学生に変えれば、児童書として更に魅力的な作品になるのではないかと思います。
賢鼠、獅子をして百獣の王ならしめる事
我こそが百獣の王と自惚れて他の動物に横暴な態度を取っていたライオンが、賢いネズミの助言により本当の王様になるまでを丁寧に描いた、完成度の高い作品でした。「人を大切にしよう」という物語のメッセージは、子どもから大人まで幅広く伝わるものだと思います。読後には、胸がいっぱいになった読者も多かったのではないでしょうか。
※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。
ポイント最上位作品として、“読者賞”に決定いたしました。どこか懐かしさを感じさせる繊細な絵柄は非常に完成度が高く、ストーリーの雰囲気とも合って、世界観に引き込まれました。また、「ロボットと心」というテーマや、博士に対するロボットの台詞ひとつひとつに心を打たれた読者は多かったのではないでしょうか。